蒙古ひだと遺伝の関係性

赤ちゃんに蒙古ひだは遺伝する?

日本人などアジア人に特徴的な目元を作る要因としてあげられる「蒙古ひだ」は、モンゴロイド系に属する日本人の約8割に見られると言われています。一重や腫れぼったいような目になる蒙古ひだができたのは一体どうしてなのでしょうか?もしも子供ができたとき、蒙古ひだは赤ちゃんに遺伝するのでしょうか?遺伝という観点から蒙古ひだについて考えてみましょう。

寒冷な気候から生まれた蒙古ひだ

例えば高温多湿の気候のもとで暮らしてきた人種は肌の色が濃く、紫外線が少ない北欧で暮らしてきた人種は紫外線を多く吸収するために皮膚の色が薄いように、人間はその進化の過程で気候に合わせて姿形が少しずつ変化してきました。

目元の印象を大きく変える蒙古ひだも、例外ではありません。一説によれば、モンゴロイド(黄色人種)の中でも蒙古や中国北部、西シベリア地方の寒い土地で暮らしてきた人は、体温が放出されることを防ぐために顔の凹凸を少なくしてきたと言われています。そして、目の周りも、蒙古ひだを発達させることで、目を寒さから守ってきたのです。

今ではそれほど寒さにさらされることがないからこそ、必要ないと感じるものの一つかもしれませんが蒙古ひだができた理由は、私たちの先祖が生き抜くための身体の変化だったのです。では、この蒙古ひだ、子供にも遺伝することがあるのでしょうか?

参照:『寒冷気候とモンゴロイドの成立』第四紀研究, 1974
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaqua1957/12/4/12_4_265/_pdf(最終確認日:2018/01/16)

遺伝はメンデルの「優性の法則」で成り立っている

学校の理科や生物の授業で習ったメンデルの「優性の法則」は、遺伝がどんな風に子孫に現れていくかを解明した法則です。

メンデルの優性の法則とは、遺伝子には優性遺伝子と劣性遺伝子があり、親がどの遺伝子を持っているかによって子供に遺伝するものが変わるというもの。さらに、優性遺伝子と劣性遺伝子両方を持ち合わせた子供なら、優性遺伝子の方が優先して発現すると言われています。

さて、ではどんな場合に子供の目が二重になったり一重になったりするのでしょうか?

遺伝パターンの出方

人間の遺伝子は、優性遺伝子と劣性遺伝子があるというのは先程お話ししました。私たちが持つ遺伝子は基本的に2つの遺伝子がセットになっています。優性遺伝子Aと劣性遺伝子aの組み合わせは人によって異なり、次のような3パターンのセットがあります。

「AA」:優性遺伝子が2つ並んだ状態

「Aa」:優性遺伝子が1つ、劣勢遺伝子が1つの状態

「aa」:劣性遺伝子が2つ並んだ状態

例えばヒトの目で言えば、二重まぶたは優性遺伝子(A)。一重まぶたは劣性遺伝子(a)と言われています。つまり「AA」「Aa」なら二重、「aa」なら一重になるのです。

母親が「Aa」で二重、父親も「Aa」で二重だった場合でも、4分の1の確率で子供は「aa」の遺伝子を持って生まれてきます。

参照:『メンデルの遺伝学』京都大学OCW
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/faculty-of-agriculture-jp/5119000/2013-03.pdf(最終確認日:2018/01/16)

ただし、まぶたが一重になるか二重になるかは、遺伝に加えて肥満度なども影響してきます。また、二重まぶたの遺伝子を持っていたとしても、目の周りの皮膚が分厚いモンゴロイド系人種は、目を開けたときに皮膚が折り曲がらず、一重になる割合も多くなると言われています。

目頭切開をしても蒙古ひだは遺伝する

それでは、遺伝の話から蒙古ひだの話に戻りましょう。

蒙古ひだが優性遺伝か劣性遺伝かということに関する研究はあまりないものの、長い年月をかけて目の周りの皮下脂肪を分厚くし、蒙古ひだを作ることで寒さから身を守ってきた日本人の祖先たち。当然私たちの中には蒙古ひだを持つという遺伝的要素が備わっていると考えられます。

そのため、たとえ目頭切開などで美容整形をしたとしても、遺伝的要素は赤ちゃん世代に継承され、蒙古ひだを持った赤ちゃんが生まれる可能性は高いのです。

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